2011年07月22日
第2次泡瀬裁判提訴(訴状、弁護団コメント)
那覇地方裁判所前 報告集会にて、前川団長記者囲み取材中
2011年7月22日(金)
12時半 集会・13時 訴状提出(提訴)、13時すぎ 報告集会
あまりにも暑くて原告団は、日陰へ避難!
原告、支援者40名前後、マスコミ約20人
沖縄県への訴状
「第二次泡瀬干潟埋立公金支出差止請求事件」
事件番号は,沖縄県が,平成23年(行ウ)17号
※訴状のコピーです。別紙原告目録を除く
原告275人(内120名は沖縄市民)
沖縄市への訴状
「第二次泡瀬干潟埋立公金支出差止請求事件」
事件番号は,沖縄市が,平成23年(行ウ)18号
※訴状のコピーです。別紙原告目録除く
原告121人(沖縄市民)
原告は延べ276名です。
※県のみ、市のみの原告がいるため
※県、市ともに内容は一緒で、1枚目の
請求の趣旨が違うだけです。
第二次泡瀬干潟埋立公金支出差止請求事件弁護団コメント
1 今回、我々弁護団13名は、対沖縄県原告275名、対沖縄市原告121名と共に、再び、泡瀬干潟埋立工事に対する公金の支出を差し止めるための訴えを提起することにした。
「再び」というのは、泡瀬干潟の埋立事業については、2005年(平成17年)から2009年(平成21年)にかけて、第一次訴訟を行っており、今回が二度目の裁判になるからである。
第一次訴訟において、那覇地方裁判所、福岡高等裁判所那覇支部は、それぞれ本件埋立事業計画に経済的合理性が認められないことを判示し、第一次訴訟原告の訴えをほぼ全面的に認める判決を下した。
同判決後、沖縄県、沖縄市、国が新たな計画を策定して埋立事業を進めようとしていることは報道のとおりである。今回の第二次訴訟は、沖縄県、沖縄市の新たな計画に対して、再度公金の支出の差し止めを求めるものである。
2 私たちの主張のポイントは、大きく三点ある。
ア まず、第一点であるが、新たな埋立事業計画についても、やはり自然環境保護の観点からの精査が不十分であり、このまま埋立を進めることは許されないというものである。
本件訴訟は、泡瀬干潟の保全を訴える「自然の権利」訴訟である。
自然界では生物・非生物が相互に関連して系をなして生存を続けている。人間も例外ではなく、自然のこの関連の中で進化し、人として文化をはぐくんできた。「自然の権利」は、そうした人も自然の一部であり、相互に関連した群集の一員であるという自覚に基づく思想である。相互に関連した世界にあって人は特別な存在ではなく、ともに生きていく一員でしかない。人が自然とともに生きていこうという自覚を持つとき、人は自然を守るために自然を代弁し、それは同時に自己の権利の行使でもある。こうした自己の権利を通じて自然を代弁することを「自然の権利」と呼んでいる。
具体的な内容について述べる。変更前の埋立事業計画については、2000年(平成12年)頃までに一応の「環境アセスメント」が行われているが、上記判決は、その手続自体を「不十分な部分も散見されるものである」と評価している。この環境アセスメントが終了してから現在までに、泡瀬干潟及びその浅海域から、次から次へと新種・貴重種等が確認されている。また、変更前の本件埋立事業の実施による環境への悪影響が現実に確認されている上、さらには、自然保護、生物多様性の保全のための各種環境法令等が整備され、自然や生物多様性というものの価値がより高まってきていること、環境アセスメントにおける調査、予測、評価の手法についても、2000年ころ当時に比べ格段に進歩していることなどからすると、上記の2000年当時に実施された杜撰きわまりない「環境アセスメント」が、現在の本件埋立事業における公有水面埋立法上の免許・承認の変更許可、変更承認時点においてその判断の根拠として必要十分なものとなっていることはあり得ないというべきである。
新計画は、前計画の単純な規模縮小版でもなければ、前計画に軽微な変更があったに過ぎないと評価されるようなものでもない。そのような状況の中で、10年以上前の不十分な環境アセスメントに従って進められている今回の新埋立計画が「その埋立が環境保全に付き十分配慮せられたるものなること」(公有水面埋立法4条1項2号)との要件を充足することはあり得ないのである。
イ 次に第二点であるが、新計画は、災害防止に対する配慮が極めて不十分であるために、これをそのまま進めることは許されないという主張である。
周知のとおり、わが国では、本年3月11日に東北地方太平洋沖大地震が発生し、東日本を中心に甚大な被害が生じた。沖縄市の新土地利用計画は、この大震災以前に作成されたものであるが、その沖縄市案をもとに国・県が埋立変更許可申請書(承認申請書)を提出したのは本年4月26日である。国・県は、東日本大震災の教訓を埋立事業計画に活かすべきであるにもかかわらず、従前の計画と比べて埋立地の地盤高の高さが低くなっていたり、埋め立て地へのアクセス道路が従前の2本から1本に変更されていたりする。また、埋立地の整地後の地盤改良については沖縄県が施工することになっているが、その工法は明らかになっていない上、本件埋立事業における事業費の積算の段階においては、東日本大震災の際に問題となった液状化に十分に対応できるような改良工事までは予定されていないものとなっている。津波が生じた際の避難場所となるべき高台なども予定されていない。
このような計画は、公有水面埋立法4条1項2号の「災害防止に付十分配慮せられたるもの」との要件を充足することがないことは明らかである。
ウ 最後に第三点だが、本件埋立事業・東部海浜開発事業には経済的合理性が認められないため、本件計画を進めることは許されないという主張である。
公有水面埋立法は、免許・承認の要件として、「国土利用上適正且合理的ナルコト」との要件を要求しているところ、これは、免許・承認の変更許可・変更承認の際にも同様に要求されるものである(公有水面埋立法4条1項1号、13条の2第2項、42条3項)。ここでいう「国土利用上適正且合理的ナルコト」というのは、経済的合理性のみならず、本当にそこを埋め立てて事業を進めることが「国土利用」のあり方として適正かつ合理的と言えるかという大きな意味を含むものであると考えるが、干潟やそこに生息する生物資源の適正な利用、生物多様性保全その他の環境保護の観点・災害防止の観点などからは決して適正かつ合理的でないというのはすでに述べたとおりである。そのような理解を前提に、以下では、経済的合理性の有無についての主張を述べる。
経済的合理性についていえば、先ほどの公有水面埋立法の規定以外にも、地方自治法、地方財政法の規定が、地方公共団体の事務について、経済的な合理性を要求している(地方自治法2条14項、地方財政法4条1項等)。第一次訴訟控訴審判決は、本件事業について、「新たな土地利用計画に経済的合理性があるか否かについては、従前の土地利用計画に対して加えられた批判を踏まえて、相当程度に手堅い検証を必要とする」と判示したのだが、我々は、沖縄市の策定した新土地利用計画について、従前の土地利用計画に対して加えられた批判を踏まえて、相当程度に手堅い検証がなされた形跡はないと考えている。つまり、現段階においてなお、新土地利用計画に関する入域観光客数、宿泊需要、商業・臨界商業施設進出数など、多くの点の予測に誤りがあると考えている。そして、その結果、沖縄市の財政に与える影響に関する沖縄市の予測も誤っていることになる。
なお、沖縄市は、2010年7月に発表した新土地利用計画案中の試算で、本件埋立事業を前提とする東部海浜開発事業の全体の収支は30年間で67億円の赤字が発生するとしている。沖縄市自身の試算でもこのような大幅な赤字が発生すると予測されているわけだが、この試算にも重大な誤りが含まれている。例えば、沖縄市が収入として見込んでいる民間への土地売却代、土地賃貸料や税収は、埋立地に想定した民間資本が全て立地・入居することが前提となっているが、沖縄市が実施したとする「第2次企業等ヒアリング(36社)」の結果でも、民間資本の進出が確約されているわけではなく、実際に民間資本が埋立地に立地・入居するか否かは不透明な状況にあるのであって、土地売却代・賃貸料収入や税収の確実性は存在しない。要するに、収支計算の「収入」の部分に不透明な金額が含まれているのである。また、収入の一部である税収についても、地方交付税の減少を考慮せずに試算を出しているため、不当に過大な金額が収入として積算されている。
以上の例は、沖縄市試算の誤りの一部であるが、これだけでもすでに沖縄市の新土地利用計画に問題があることはご理解頂けると思う。
次に、沖縄県の埋立事業計画について述べる。
計画全体における沖縄県の役割の位置づけだが、沖縄県は、一部埋立を自ら行い、その埋立地及び国から購入した埋立地を沖縄市に売却するという立場にある。要するに、沖縄県は、埋立事業費・国からの土地購入費・埋立後のインフラ、アクセス道路、防波堤、人工海浜整備費という支出に対して、沖縄市からの土地購入代金という収入で本件事業の経済的合理性を保とうとしているのである。ところが、沖縄県「資金計画書」では、平成31年度に土地売却代金約111億4568万円の収入があることになっているが、沖縄市の東部海浜開発事業パンフレットでは、「進出企業の目途がついた時点で土地を購入することで、土地購入によるリスク回避が図られる」とされており、これによれば上記沖縄県「資金計画書」どおりに土地売却代金が平成31年度に入金されるか否かは全く分からない状況にある。つまり、支出だけが確実に見込まれ、収入が全く未定というわけで、結局、本件埋立事業計画に経済的合理性が保たれているとは到底言えない状況にある。
このほかにも県の埋め立て計画には沖縄市の土地利用計画と同様の問題点が存在するし、沖縄県及び国の提出した埋立変更許可申請書・変更承認申請書からは、例えば「交流施設用地」、「栽培施設用地」、「健康・医療施設用地」及び「多目的広場用地」につき具体的にどのような施設を整備しようとしているのかが不明確であったり、また、「栽培漁業施設」、「マリーナ」や「小型船だまり」を何処が管理・運営するのか、「人工ビーチ」の管理・運営・メンテナンスはどうするのかなど、整備した施設の管理・運営方法や、賃貸契約の内容なども不明確であるという問題が存在すること読み取れる。
また、本件埋立事業における国の目的である埋立用の浚渫土砂を生じさせる新港地区のFTZ構想(特別自由貿易地域)自体も、土地分譲、企業誘致が進まぬ今、すでに破綻しているというほかない。
3 以上の三点、環境保護の観点、災害防止の観点、経済的合理性の観点から、本件計画への公金支出の差し止めを求め、訴訟提起する。
以上
2011年7月21日(木)19時~ @沖縄市かりゆし園
訴訟団結成総会資料より
Posted by 泡瀬の前川 at 16:09│Comments(0)
│裁判
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